「事業再構築指針」が発表されました。

すぐに経済産業省の「事業再構築補助金」のHPを確認したい方はこちら

 

今回、発表されたのは「事業再構築指針」と「事業再構築指針の手引き」の2種です。

 

1、事業再構築指針

まず「事業再構築指針」です。

「事業再構築指針」より1ページ目を引用

本事業として「中小企業等事業再構築促進事業」として、事業再構築の類型を5種設定されました。

新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換と事業再編です。

最後の事業再編については、会社法上の組織再編に加え、新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換を行うものですので、実質は類型は4種と考えてよいかもしれません。

 

ここには各類型の「定義」「該当要件」「非該当例」が記載されていますので、本補助金の申請にはこの指針に沿った事業計画を立てる必要があります。

内容は製品やサービス、市場が新規性を有するものと書かれている内容が多く、「新規性」という要件を明確に打ち出してきました。

詳しくは「事業再構築の手引き」と一緒に確認したいと思いますので、ここでは割愛させていただきます。

 

2、事業再構築指針の手引き

2月15日に発表された「事業再構築の手引き」と比べると、まったく別物ではないかというほど、内容が変わっています。

思い描いている事業がこの補助金に合致していると考えられていた事業者さまがたくさんいらっしゃると思いますが、3月17日に発表された「事業再構築指針の手引き」を見られてがっかりされた方も多いでしょう。

「事業再構築指針の手引き」より表示を引用

 

事業再構築指針の内容をわかりやすく記載したものですが、読めば読むほどこの補助金が事業者にとっての新たな取り組みであり、他社と比べても「一般的ではない」ほどの取り組みを求められているようです。

ハードルが高いですね。

  

3、事業再構築の5つの類型

今回は事業再構築の定義として「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5つの類型について「事業再構築指針」を見てみましょう。

 

1)新分野展開

「新たな製品等で新たな市場に進出する」と書かれています。

「事業再構築指針」に書かれた「新分野展開の定義」は以下の通りです。

イ 新分野展開の定義

 新分野展開とは、中小企業等が主たる業種(売上高構成比率の最も高い事業が 属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業をいう。以下同 じ。)又は主たる事業(売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定め る日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業をいう。以下同 じ。)を変更することなく、新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービ スを提供することにより、新たな市場に進出することをいう。

「事業再構築指針」より引用

「主たる事業」を変更せずに行う「新たな製品等の提供」という事ですね。

多くの事業者さまが該当すると思われます。

 

続いて「新分野展開の該当要件」は下記の通りです。

本事業の対象となる新分野展開とは、次のいずれにも該当する場合をいう。

(1) 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商 品若しくはサービスが、新規性を有するものであること。

(2) 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商 品若しくはサービスの属する市場が、新規性を有するものであること。

(3) 事業計画期間終了後、新たに製造する製品又は新たに提供する商品若しく はサービスの売上高が、総売上高の十分の一以上を占めることが見込まれるも のであること。

「事業再構築指針」より引用

「事業を行う中小企業等にとって」、「商品サービスが新規性を有する」と「市場が新規性を有する」と書かれています。

もう一つの要件として、「事業計画期間終了後、総売上高の十分の一以上を占める事が見込まれる」とあります。

 

まあ、なんとかクリアできそうな指針ですね。しかし

下のほうに「製品の新規性要件」と「市場の新規性要件」について解説していますので一緒にご確認ください。

2)事業転換

「主な「事業」を転換する」と書かれています。

「事業再構築指針」に書かれた「事業転換の定義」は以下の通りです。

イ 事業転換の定義
事業転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更することをいう。

「事業再構築指針」より引用

「主たる業種」を変更せずに、「新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービス」を提供し、その結果「主たる事業」を変更するというものです。

 

続いて「事業転換の該当要件」は下記の通りです。

ロ 事業転換の該当要件
本事業の対象となる事業転換とは、次のいずれにも該当する場合をいう。
(1) 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商 品若しくはサービスが、新規性を有するものであること。 ※新分野展開と同 様。
(2) 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商 品若しくはサービスの属する市場が、新規性を有するものであること。 ※新 分野展開と同様。
2
(3) 事業計画期間終了後、新たに製造する製品又は新たに提供する商品若しく はサービスを含む事業が、売上高構成比の最も高い事業となることが見込まれ るものであること。

「事業再構築指針」より引用

さらっと書かれていますが、(3)には事業計画期間終了後に「新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービス」の事業の売上高構成比が最も高い事業になることが見込まれるものとあります。

本補助事業で実施する新しい事業が既存の事業を超えるというは、ハードルが高いですね。

 

3)業種転換

「主な「業種」を転換する」と書かれています。

「事業再構築指針」に書かれた「業種転換の定義」は以下の通りです。

イ 業種転換の定義
業種転換とは、中小企業等が新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービスを提供することにより、主たる業種を変更することをいう。

「事業再構築指針」より引用

こちらは「新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービス」の提供で、「主たる業種」を変更することと書かれています。

 

続いて「業種転換の該当要件」は下記の通りです。

ロ 業種転換の該当要件
本事業の対象となる業種転換とは、次のいずれにも該当する場合をいう。
(1) 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商 品若しくはサービスが、新規性を有するものであること。※新分野展開と同様。
(2) 事業を行う中小企業等にとって、事業により製造する製品又は提供する商 品若しくはサービスの属する市場が、新規性を有するものであること。※新分野展開と同様。
(3) 事業計画期間終了後、新たに製造する製品又は新たに提供する商品若しく はサービスを含む業種が、売上高構成比の最も高い業種となることが見込まれるものであること。

「事業再構築指針」より引用

こちらも(3)では事業計画期間終了後に「新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービス」の事業の売上高構成比が最も高い事業になることが見込まれるものとあります。

本補助事業で実施する新しい事業が既存の事業を超えるというは、やはりハードルが高いですね。

4)業態転換

「製造方法等を転換する」と書かれています。

「事業再構築指針」に書かれた「業態転換の定義」は以下の通りです。

イ 業態転換の定義
業態転換とは、製品又は商品若しくはサービスの製造方法又は提供方法を相当程度変更することをいう。

「事業再構築指針」より引用

「製造方法又は提供方法」を「相当程度変更」すると書かれています。

相当程度変更とありますので、かなりの範囲を変えていく計画を求められているのでしょう。

 

続いて「業態転換の該当要件」は下記の通りです。

ロ 業態転換の該当要件
本事業の対象となる業態転換とは、次のいずれにも該当する場合をいう。
(1) 事業を行う中小企業等にとって、事業による新たな製品の製造方法又は新たな商品若しくはサービスの提供方法が、新規性を有するものであること。
(2) 製品の製造方法を変更する場合にあっては、製造される製品が新規性を有するものであること。
(3) 商品又はサービスの提供方法を変更する場合にあっては、既存の設備の撤去、既存の店舗の縮小等を伴うものであること又は非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化等に資するデジタル技術の活用を伴うものであること。
(4) 事業計画期間終了後、新たな製品の製造方法又は商品若しくはサービスの 提供方法による売上高が、総売上高の十分の一以上を占めることが見込まれるものであること。

「事業再構築指針」より引用

こちらでは「新たな製品を製造し又は新たな商品若しくはサービス」に新規性を求められ、製造方法や提供方法にも新規性を求められています。

更に、「設備撤去等の店舗縮小を伴う」か、「非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化等に資するデジタル技術の活用を伴う」のいづれかを求めてイます。

最後に(4)では「売上高が、総売上高の十分の一以上を占めることが見込まれる」と他の類型に比べると少しやさしめの目標となっています。

 

5)事業再編

「事業再現を通じて新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいづれかを行う」と書かれています。

「事業再構築指針」に書かれた「事業再編の定義」は以下の通りです。

イ 事業再編の定義
事業再編とは、会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うことをいう。

「事業再構築指針」より引用

「事業再編」に加えて「新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換」を行うものと定義されています。 

 

続いて「事業再編の該当要件」は下記の通りです。

ロ 事業再編の該当要件
本事業の対象となる事業再編とは、次のいずれにも該当する場合をいう。
(1) 組織再編行為等を行うものであること。
(2) 新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うものであ ること。

「事業再構築指針」より引用

「事業再編」+「新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換」を要件とされています。

難しいのは補助事業の申請時期と、実際の事業再編の時期が合うかどうかです。

4、製品等の新規性要件

「事業再構築指針の手引き」で「製品等の新規性要件」を見てみると

「事業再構築の手引き」より引用

①過去に製造等した実績がないこと

②製造等に用いる主要な設備を変更すること

③競合他社の多くがすでに製造等している製品等ではないこと

④定量的に性能または効能が異なること

の4つのをすべて満たす計画が必要と書かれています。

③や④はなかなか難しいですね。

 

5、市場の新規性要件

では、「市場の新規性要件」を見てみると

「事業再構築指針の手引き」より引用

①既存製品等と新製品等の代替性が低いこと

②既存製品等と新製品等の顧客層が異なること(任意要件)

とあります。①は必須の要件なので、既存製品等を購入していた既存顧客が、新製品等に乗り代わってしまうような計画では要件を満たさないのです。

これもなかなかハードルが高いですね。

 

例えば、福岡市内でちゃんぽんを提供している飲食店が、全国向けに通販でちゃんぽんを提供する場合は、福岡の店舗にお越しいただく既存顧客よりも、全国で購入してくれる新規顧客への販売であれば「市場の新規性」は満たすのではないかと思います。(あくまで私の私見です)

 

6、まとめ

2月15日発表の「事業再構築の手引き」に比べると求められる内容が具体的になり、容易には認められないほどの要件が細かく設定されていると感じました。

新規性の要件等はそもそも事業計画として考えられていたのであれば問題ありませんが、新規性を計画に盛り込むために想定していない補助事業計画を立ててしまうのは本末転倒です。

既存事業と新規事業や新商品等の計画があり、その計画のままこの「事業再構築補助金」の要件に当てはまるのであれば、ぜひ申請をしていただければと思います。

 

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