福岡大学「大学連携講座」でゲスト講義を担当しました。「小売の学びで“見える世界”が変わる」受講生アンケートから見えた学生の反応

2026年9月28日(月)、福岡大学商学部の講義「流通システム論」において、福岡販売士協会との大学連携講座としてゲスト講義を担当しました。

テーマは「小売の学びで“見える世界”が変わる」。受講生は約140名、2年生から4年生まで、すでに販売士3級・2級を取得している学生も含まれる教室でした。

本記事では、70分の講義で何を伝えたのか、そして講義後のアンケートとコメント(138件)から見えてきた学生の反応を、講師としての振り返りとあわせてご報告します。

目次

講義のねらい:資格説明の前に「小売の面白さ」を届ける

今回の講義で意識したのは、資格の説明から入らないことです。

学生にとって小売業は、毎日のように利用するコンビニやスーパー、そしてアルバイト先として非常に身近な存在です。

だからこそ、まずは「いつもの買い物の見え方が変わる」体験をしてもらい、その先に販売士という学びの入口がある、という順番で構成しました。

講義の冒頭では、受講生に「70分後に3つを持ち帰ってください」とお願いしました。

いつも行くコンビニの棚が読めるようになる感覚(SEE)、小売・メーカー・IT・Webのどの業界に進んでも先には必ずお客様がいるという理由(CONNECT)、そして資格を取ったあとにどう使うか(USE)の3つです。

「点」だった経験が、学びによって「線」になる

自己紹介では、私自身の学生時代の話をしました。

年末のスーパーでの蒲鉾の補充、ドーナツ店での販売、コンビニの深夜勤務。当時はただの「時給のいいバイト」だと思っていた仕事が、のちに中小企業診断士や販売士を学ぶ中で、すべて流通というビジネスの最前線だったと気づいた経験です。

バラバラだった現場経験という「点」が、体系的な学びによって「線」になり、やがて「面」として仕事に生きてくる。

この話は、アンケートでも最も多くの学生が引用してくれた言葉になりました。

レジの「ピッ」の向こう側と、買い物の「なぜ?」

講義の前半では、販売士が「接客がうまくなる資格」ではなく、消費者の動きを読み、数字と仕組みで売場を動かす「流通戦略の資格」であることを、身近な題材で解説しました。

正式名称が「リテールマーケティング(販売士)検定」であることも、多くの学生にとって新しい発見だったようです。

まずはレジでバーコードを読み取る「ピッ」という1秒の裏側から。

JANコードやPOSデータが、単に会計のためではなく「何が、いつ、いくつ売れたか」を記録し、発注や売場づくりの判断根拠になっていることを紹介しました。

続いて、なぜレジ横に大福や乾電池があるのか、なぜスーパーは卵1パック198円の赤字で良いのか、なぜ100円ショップは何でも100円で儲かるのか、なぜ牛乳や卵は店の一番奥にあるのか、という4つの「なぜ?」を、販売士3級の現場視点と2級の経営視点の2段階で読み解きました。

同じ店に立っていても、3級は売場と商品を見る目、2級は店と数字を見る目。
資格の級の違いは難易度の差ではなく「視点の高さ」の差であることをお伝えしました。

3分間ミニワーク:新作エナジードリンクをどう売るか

中盤では、隣の人とペアになってのミニワークを行いました。

お題はコンビニの「新作エナジードリンク(1本200円)」。誰に売るか、どこに置くか、どんなPOPを付けるか、何と並べるか、の4つの問いから考えてもらいました。

「期末テスト前の福大生に」「レポート提出まであと3時間」といったアイデアが出たところで種明かしです。

今話し合った4つの問いは、実はマーケティング、動線計画、VMD、クロスマーチャンダイジングという販売士の学習内容そのもの。

SNSでスクロールを止める「1秒のフック」と、売場のPOPは同じ技術であること、ただし売場の表示には法的な責任が伴うことにも触れました。

小売業のいま、これから。そしてAI時代の人の役割

後半は、卸売・小売業が売上高・就業者数ともに日本最大級の産業であること、業態の主役が10年ごとに入れ替わってきた歴史、そして2026年の小売業が向き合う4つの変化(パーソナライズ化とデータ活用、人手不足とAI・自動化、OMOの進化、サステナビリティ経営)を紹介しました。

AI活用については、AIはロボット接客のような目に見える場所よりも、需要予測や在庫管理といったバックヤードで力を発揮していることを解説しました。

AIが計算する時代だからこそ、人は「AIに何を計算させるか」を決め、出てきた答えを疑い、売場で判断する側に立つ。
その判断の土台になるのが、販売士で学ぶ流通の基礎だというメッセージで締めくくりました。

アンケート結果:約9割が「よかった」と回答

講義後のWebアンケートでは、回答のうち90%が「よかった」、9%が「まあよかった」と回答し、肯定的な評価は約99%となりました。

また、別途いただいた感想コメントを分析したところ、次のようなテーマが多く挙がりました。

最も多かったのは、販売士への興味・受験意欲に関する記述で66.7%。

「販売員のための資格だと思っていたが、流通やマーケティング全般の資格だと分かった」
「思っていたほどハードルが高くないと知り、まずは3級に挑戦したい」
「大学在学中に取得したい」
といった前向きな声が多く寄せられました。

次いで、売場戦略・動線・消費者心理への理解が50.7%、身近な日常やアルバイトとの接続が43.5%。
スーパーやコンビニ、ドラッグストア、100円ショップで働く学生から「牛乳が奥にある理由に初めて気づいた」「次のバイトではJANコードや棚の配置の意図を意識して働きたい」といった、翌日からの行動につながるコメントが目立ちました。

さらに、「点が線になり、面になる」という学びの姿勢への共感が34.8%、POSデータやAIへの着目が28.3%。

「AIに仕事を奪われる側ではなく、AIを使う側になりたい」「大学の講義も将来すべてつながっていると感じた」という声もありました。

すでに販売士2級を取得している学生からは、資格を取って終わりにせず学び続けたいという感想も寄せられ、取得者にとっても学びの意味を再確認する時間になったと感じています。

講師としての振り返りと、次回への改善点

大きな手応えを得た一方で、講師として反省点もありました。

伝えたいことが多く、70分に対してスライドの情報量が多すぎたこと。
一部のスライドの文字が小さく、後方の席からは見えにくかったこと。
そして、声のトーンや間の取り方で、もっと話に強弱をつけられたという点です。

また、学生時代に販売士1級を取得し、現在はキッチンカーなどの事業を展開されている若手販売士の事例は、学生の関心が高いテーマだっただけに、もっと時間をかけて掘り下げたかったと感じています。

次回以降は、内容を絞り込み、写真や図解を増やして、より「見て分かる」講義に仕上げていきます。

おわりに:日常の買い物を「生きた教科書」に

今回の講義を通じて改めて感じたのは、学生の皆さんがすでに豊富な「現場経験」を持っているということです。

アルバイトや日々の買い物という「点」に、体系的な知識というレンズが加わることで、見える世界は大きく変わります。

貴重な機会をいただいた福岡大学の先生方、受講生の皆さん、そして福岡販売士協会・福岡商工会議所の関係者の皆さまに、心より感謝申し上げます。

日本販売士協会HPへ掲載

日本販売士協会のHPにも掲載頂きました。

講演・研修のご依頼について

毛利中小企業診断士事務所では、大学・専門学校でのゲスト講義、企業研修、商工団体主催のセミナーなどの講師を承っております。

小売・流通業の基礎とこれから、販売士資格の活かし方、AI時代の人材育成、事業承継など、受講対象に合わせて内容を設計いたします。

ご依頼・ご相談は当事務所ホームページよりお気軽にお問い合わせください。

また、販売士3級の学習を始めたい方に向けて、学習コンテンツを「販売士イノベーションラボ」(https://hanbaishi-innovation-lab.jp/)で発信しています。
講義を受けて興味を持っていただいた方は、ぜひ最初の一歩としてご活用ください。

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