スーパーのレジ横に、なぜ大福や乾電池が置いてあるのか。特売品は赤字なのに、なぜ売るのか。100円ショップは、なぜ何でも100円で成り立つのか。牛乳は、なぜ店の一番奥にあるのか。
大学の講義で、販売士の学びの入口として、この4つの「なぜ」を話しました。受講したのは、2年生が半分、3年生と4年生が残り半分の学生さんたちです。この記事では、4つの話題それぞれの中身と、話をしていて表情が変わった瞬間、そして読んでくださった方が店で試せる見方をまとめます。
身近なスーパーで、販売士の「王道」を4つの「なぜ」にした
講義の題材は、誰もが行ったことのあるスーパーにしました。専門用語から入ると、聞く側は最初の数分で距離を置いてしまうからです。「あの店の、あの売場の話です」と言えば、頭の中に自分の知っている景色が浮かびます。
そのうえで、販売士の勉強の中でも王道と言われる部分を、次の4つの問いに置き換えました。
1つ目は、レジ横の大福や乾電池です。会計を待つ間に、つい手が伸びる。レジの前は、お客様が必ず立ち止まる場所です。そこに小さくて手に取りやすい商品を置き、買う予定がなかったものを、ついでに買ってもらう工夫です。販売士の勉強では、関連する商品を組み合わせて売る考え方として学びます。
2つ目は、スーパーの特売品です。利益が出ないほど安くしても、その商品をきっかけに来店してもらい、ほかの商品も買ってもらえれば、店全体では成り立ちます。お客様にとっては「安いから行く」という理由になり、店にとっては来店のきっかけになります。
3つ目は、100円ショップの儲けやすさです。一つひとつの商品ではなく、売場全体でどう利益を出すかという見方です。原価の低いものも高いものも同じ価格で並べて、全体で成り立たせる。身近な店なのに、仕組みを考えたことがない人が多い話題です。
4つ目は、牛乳や卵が店の奥にある理由です。店の奥に置かれた商品が、お客様を売場の奥まで引き込む。これが、店内のマグネットの話でした。

「店内のマグネット」の話で、表情が変わった
講義をしていて、受講者の表情がはっきり変わったと感じたのは、販売現場の話をしているときでした。なかでも、店内のマグネットの話では、「そんな話は初めて聞いた」という顔をしている学生さんが何人もいました。
マグネットとは、お客様を売場の奥へ引き込む力を持つ商品や場所のことです。牛乳を取りに店の奥まで歩くと、その途中でほかの商品が目に入ります。お客様が店内を回遊するように、売場は設計されています。
普段から見ている売場なのに、理由を考えたことはない。その落差が、表情に出たのだと思います。
学生の声と、アルバイト経験者の多さ
受講後のアンケートにも、同じ話が出てきました。品出しのアルバイトをしている学生さんは、こう書いてくれました。
「牛乳が奥にあることも意識していませんでしたがお客様の導線を考えて置かれていることに気づけました。」
別の学生さんは、次のように書いています。
「普段何気なく利用しているスーパーの商品配置にも、売上を伸ばすための戦略があると知り、買い物の見方が変わりました。」
さらにこんな声もありました。
「なぜ牛乳が奥にあるのか?なぜ卵があの配置なのか?など、正直あまりよく考えないまま働いていました。」
アンケートの回答のうち、「バイト」「アルバイト」という言葉が出てくるものは138件中18件でした。単語で数えただけなので、実際にはもっと多いかもしれません。売場に立つ学生さんが想定以上に多く、そうした学生さんの多くは、売場づくりの技術的な部分を知らなかったという反応でした。毎日売場に触れていても、理由までは教わる機会が少ないのだと思います。
なお、講義の後に受講者や現場の行動が実際に変わったかどうかは、確認できていません。アンケートの範囲では、売場を見てみようという声が見られた、というところまでが私の把握していることです。
話が長引くと、集中が切れる
うまくいった場面ばかりではありません。講義が始まって20分ほど経つころから、話が少し長引くと、寝てしまう学生さんやぼんやりしている学生さんが目に入るようになりました。少し焦り、話題を切り替えましたが、パッと目を覚ますような変化はありませんでした。
ある程度の内容ごとに話題を切り替える必要がある。今回の学びは、この一点です。4つの「なぜ」を一つずつ区切って話したことが、聞く側にとっても話す側にとっても助けになったと感じています。
明日からできる一歩は、店に入った瞬間から
販売士の学びは、ひとつのテーマが短く、場合によっては今日そのままスーパーへ行って確認できます。知識を得て、それを自分の目で見に行く。この往復が、いちばん大事なのではないかと思っています。
スーパーの作りは店ごとにさまざまです。だからこそ、店に入った瞬間から、そのスーパーの方針が見えてきます。私はそれを楽しみながら売場を巡ります。

読んでくださった方に試していただきたいのは、次の三つです。
- レジ横に何が置かれているかを見る
- 牛乳や卵がどこにあるかを確かめ、そこまで歩く途中で目に入った商品を覚えておく
- 目立つところに出ている特売品は何か、その近くに何があるかを見る
正解を探そうとしなくて大丈夫です。「この店は、なぜこう並べたのだろう」と問いを持つだけで、売場が少し違って見えます。
まとめ
身近な題材で、小売の基本を話す。話題を区切る。そして、聞いた人が自分の目で確かめられる一歩を渡す。今回の講義で、私が大切だと感じたことは、この三つでした。
大学や専門学校、企業での講義・研修について、内容のご相談をいただくこともあります。販売士の学びを現場でどう活かすかを一緒に考えたい方は、講演・研修のご案内をご覧ください。
関連記事:


コメント