この2年間(2024年〜2025年)の調剤薬局業界は、市場規模は拡大傾向にある一方で、経営環境は二極化が進み、中小・零細企業を中心に倒産が高止まりする「再編期」にあると言えます。
以下、規模感と動向を数値で整理します。
市場規模と店舗数の動向
調剤薬局業界の市場規模は、高齢化に伴い拡大を続けています。
調剤医療費は約7.9兆円規模に達し、店舗数はコンビニエンスストアを超える約6.2万店に拡大しています。
薬局数は2024年度末時点で63,203件となり、前年度より0.6%(375件)増加しました。
また、ドラッグストア業界を含めた広義の市場では、2024年度に市場規模が10兆円を突破し、2030年には13兆円を目指すとされています。
一方で、調剤薬局単体の市場規模予測では、現在の3.18兆円から2030年に3.33兆円へと、5年間で+4.47%の小幅な成長にとどまるとの試算もあります。
これは、市場全体の拡大が主にドラッグストア併設型や大手チェーンによって牽引されている一方、調剤薬局専業の事業者にとっては成長余地が限定的であることを示しています。
経営環境の二極化と倒産の高止まり
業界全体の市場規模は拡大していますが、その内実は大きく変化しています。
企業規模による業績の二極化が顕著です。2024年度の業績を資本金別で見ると、資本金1億円以上の大手11社は売上高9,031億円(前期比8.0%増)、当期利益145億円(同7.2%増)と増収増益でした。
一方、資本金1億円未満の中小592社は売上高6,717億円(前期比3.4%増)にとどまり、当期利益は88億円(同48.7%減)と大幅な減益となっています。
倒産件数も高止まりしています。
2025年1-8月の調剤薬局の倒産は20件(前年同期比9.0%減)で、過去最多の2021年同期・2024年同期の22件に迫る水準です。
主な倒産事例としては、2025年8月に首都圏でグループ展開していたシティ・メディカル・ホールディングス(株)と関連会社3社が負債合計30億2,600万円で会社更生手続開始、2024年7月には約60カ所を展開していた寛一商店(株)と関連8社が負債合計111億6,000万円で会社更生法の適用を申請しています。
倒産は中小・零細企業が中心ですが、最近は複数のグループ企業を傘下に置く中堅規模の企業も目立つようになっています。
縮小要因と再編の加速
経営環境を悪化させている主な要因としては、以下の点が挙げられます:
- 診療報酬改定の影響
調剤薬局の経営は国の診療報酬改定の影響を直接受けます。
2024年度改定では調剤報酬は名目上0.16%のプラスとなりましたが、賃上げへの対応として給与のベースアップが求められ、実質的な収益圧迫要因となっています。 - 薬剤師不足
地方を中心に薬剤師不足が深刻化しており、人材確保には待遇アップが必要ですが、賃上げ原資の確保については企業規模で対応が分かれています。
小規模な調剤薬局では、薬剤師に不測の事態が起こった場合、事業停止に至るケースもあります。 - OTC類似薬の保険適用見直し
OTC(一般用医薬品)類似薬の保険適用見直しの検討が進んでおり、調剤薬局専業の事業者へのマイナス影響が懸念されます。
ドラッグストア併設の調剤薬局は調剤部門の売上減少をドラッグストアで補完できますが、専業業者は補完手段がなく、影響は大きくなります。 - 他業種からの参入
ドラッグストアや大手総合小売業者など他業種からの参入が相次ぎ、顧客の奪い合いが加速しています。
こうした環境下で、業界再編(M&A)が加速しています。2025年8月には、アインホールディングスが「さくら薬局」展開のクラフトを買収し傘下に収めました。
また、業界大手の日本調剤が、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズによるTOBで株式を非公開化しています。
M&Aや経営統合などで業界再編が進むなか、ビジネスモデルの変革の波に乗れない企業の退出が、今後さらに増える可能性が高いと指摘されています。
まとめ
この2年間の調剤薬局業界は、市場規模そのものは拡大傾向(調剤医療費約7.9兆円、薬局数約6.2万店)にありますが、経営環境は「縮小」というより「再編・淘汰」の局面にあります。
大手はM&Aや多角化で業績を伸ばす一方、中小・零細企業は当期利益が前年比48.7%減となるなど苦戦が顕著で、倒産件数も年間20件台で高止まりしています。
今後は、2026年度報酬改定やOTC類似薬の保険適用見直しを踏まえ、さらなる再編と退出が進むと見込まれます。
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